なぜ悪徳業者が利益を上げ、真面目な業者は失敗するのか
新聞折り込みやポスティングで溢れるリフォーム業者のチラシ──どれも似たような間取り写真、施工事例、価格が並び、見た目に大きな違いはありません。
けれど、目を引く一枚があったとしましょう。少し印象が違って「これは良さそうだ」と思わせるチラシ。ところが、その広告主が、実は悪徳業者だった──そんな話は珍しくありません。
なぜ、そんな業者の広告に目が留まってしまうのでしょうか?
それは、悪質業者が売っているものは粗悪で、黙っていては売れない、「売れないと困る」からこそ、彼らは広告の作り方、チラシの配置、言葉選び、反応を得る仕組みについて必死に考えているからです。
一方、良心的な業者──たとえば、手間ひまをかけて丁寧な仕事をしている畳店は、どうでしょうか。
「うちはいいものを出しているから、わかる人にはわかる」
「きちんと説明すれば、お客様は選んでくれるはず」
そう信じて、売り方や広告を深く考えないことが多いのです。
けれど、商品やサービスの良し悪しは、広告を見るだけでは伝わりません。
どんなに品質が良くても、伝え方を誤れば、存在しないも同然なのです。
売り込むのではなく、感情に呼びかける
多くの人は、何よりも「売り込まれること」が嫌いです。
たとえ本当は欲しかったものであっても、「売りつけられている」と思うと一気に気持ちが冷めてしまいます。
営業マン=害虫
極端に聞こえるかもしれませんが、それくらい売り込みに対する拒否反応を持つ人は少なくありません。
実は、チラシも同じです。
「この商品がいかに良いか」「この価格がどれだけお得か」といった“売り込み感”の強いチラシは、出会う前からお客様との関係をこじらせてしまう危険があります。読む人は無意識のうちに「うさんくさい」「押しつけがましい」と感じ、チラシそのものを避けてしまうのです。
これは、売り手と買い手の「感情のズレ」から生まれます。
売り手はこう考えます──
「人は論理的に判断する。良いものであると説明すれば、わかってくれるはずだ」と。
けれど、現実の購買行動はその逆です。
人は“感情で買い”、そのあとに“理屈で正当化する”のです。
つまり、お客様がチラシを見るとき、最初に判断しているのは“中身の正しさ”ではなく、“なんとなくの好き嫌い”。
その判断は、コンマ数秒で下されています。
「あ、このチラシ、なんかイヤだな」「このお店、ちょっと苦手かも」──その感覚が一度芽生えたら、どんなに内容のチラシでも、もう読んでもらえません。
大切なのは、チラシの中に「売り込み」ではなく「共感」や「好感」を生む要素を盛り込むこと。
お客様の感情に寄り添い、「このお店に頼んでみたい」と思ってもらう仕掛けが必要なのです。
具体的方法。「売れるチラシ」の作り方とは?

文章で伝える
売れるチラシ・伝わる広告には、“ある共通点”があります。
それは「文章でしっかり伝えている」こと。
現状、多くのチラシやホームページ、LP(ランディングページ)は、写真や価格ばかりが目立ち、肝心の“中身”がありません。見た目のデザインは綺麗でも、読んだ人の心には何も残らない──それでは反応は出ません。
「ビジュアルの人気は高まっていますが、コミュニケーターにとって何より大事な商品は今でも言葉です。」
The Copywriter’s Handbook,4th Edition
お客様の心を動かすのは「見た目」ではなく「言葉」です。
言葉の力で共感を呼び、信頼感を生み、「この人にお願いしてみたい」と思ってもらう必要があります。
お客様のメリットをメインに伝える
真面目に仕事をしている畳店様ほど、自社の技術力や素材の良さを前面に出しがちです。
「国産の良質な材料」「丁寧な手作業」「長年の実績」──これらはもちろん大切ですが、それだけでは不十分です。
お客様が本当に知りたいのは、「自分にとって、どう役に立つのか」。
「家族が安心して暮らせる空間になる」
「和室が明るく清潔に感じられる」
「お手入れが楽で長持ちする」
──こうした“生活者目線のメリット”を伝えることが、感情に響くチラシ作りの第一歩です。
自分自身を売り込む
さらに、忘れてはならないのが「人間」を伝えること。
どんなに良い畳でも、「どんな人が施工に来るのか」が不安なら、依頼する気にはなれません。
お客様に安心感を持ってもらうためには、まず紙面の上で人間関係を築く必要があります。
できれば笑顔の顔写真を掲載しましょう。
「こんにちは。〇〇(屋号や事業名)の〇〇と申します。〇〇市で暮らしながら、地元の皆さまのお役に立てる仕事を続けています。」
「祖父の代から続くこの仕事。便利な時代になっても、“人と人とのつながり”が一番大切だと感じています。だからこそ、目の前のお客様に喜んでもらえることを一番に考えています。」
「お客様から『頼んでよかった』『安心できたよ』と言っていただけることが、何よりの喜びです。」
たった数行の自己紹介でも、お客様との距離はぐっと縮まります。
“無機質な業者”ではなく、“顔の見える職人”として信頼される──これがチラシの中でできれば、見積もり依頼のハードルは一気に下がるのです。

